不妊治療を考える 卵管障害(症状と原因)
卵管のトラブルは女性の不妊原因の中で最も多く、およそ3割~5割を占めるといわれています。
卵管は卵子や精子の通り道となる管で、狭い部分では鉛筆の芯くらいの幅しかありません。
非常に繊細なため、内部で詰りや癒着が起こると、卵子や精子が通過できなくなり、不妊の原因となります。
また卵巣から飛び出した卵子を取り込めなくなる卵管采のピックアップ障害になることも少なくありません。
卵管内部の幅が狭くなることを卵管狭窄、完全に詰まってしまうことを卵管閉塞といいます。
卵管狭窄や卵管閉塞が起こる原因は、卵管の炎症(卵管炎)や子宮内膜症です。
卵管炎が進行すると卵管采にも炎症がおよび、卵管采が完全に塞がってしまうこともあります。
また卵管間質部と卵管采の両方が閉塞し、卵管の中に分泌液などがたまって卵管が膨れてしまう卵管留水腫に
なることもあります。
卵管が炎症を起こす原因には、クラミジア、淋菌、大腸菌、マイコプラズマなどの病原体による感染がありますが、
このうち最も多いのが性交渉によって感染するクラミジア感染症です。
病気の自覚症状がほとんどないこともあり、炎症は膣から子宮内膜、さらに卵管へと広がりやすいのです。
クラミジア感染症自体は、抗菌薬を服用することで治りますが、卵管にダメージが生じるという後遺症が問題です。
一方、子宮内膜症は、内膜組織が子宮内壁以外の場所で増殖して出血を繰り返す病気です。
子宮内膜症は卵巣にも出来やすく、卵巣にできると炎症や癒着が卵管の周囲まで広がり、卵管癒着や排卵障害の
原因になることもあります(卵巣チョコレート嚢胞)
また過去に虫垂炎などが原因で手術を受けたことがある人も、卵管周囲に癒着が起きていることもあります。
病院の検査では、子宮卵管造影検査や通水・通気検査を行って卵管内部に癒着や閉塞がないかを調べます。
卵管の詰りが軽い場合、造影剤が卵管内を通ることで詰りが解消することもあります。
尚、卵管障害では、片側の卵管にだけ狭窄や閉塞が見つかることもあります。
その場合、程度の差はあっても、もう片側にも障害が潜んでいることも少なくありません。
これらの点をしっかり理解して治療を進めていく必要があります。